「全国町並み保存連盟」の研修会・交流会である「第41回全国町並みゼミ長野松代・善光寺大会」に八女福島町並み保存会より事務局を含め8名で参加しました。
期日:2018年11月16日(金)~18日(日)
●全国町並みゼミとは
全国町並み保存連盟には66団体が加盟しています。これらの加盟団体が集まり、事例報告やパネルディスカッション、情報交換を行うのが全国町並みゼミで、今回が41回目です。
●第41回全国町並みゼミ長野松代・善光寺大会について
初日は神戸芸術工科大学教授 西村幸夫氏による基調講演「日本における町並み保存の歴史と今後の展望-松代から考える-」から始まりました。講演では「環境破壊・改変へのアンチテーゼとして保存・景観という動きが出てきた」ということで、戦後・高度成長期・バブルを背景とした町並み保存の歴史のふりかえりが行われました。また、今後は、これまでのように外部からの物理的な破壊に対しての保存活動よりも、人口減少による内部からの破壊への対応がより重要になるだろう、とのことでした。
次に国土交通省 歴史文化環境整備室長やNPO法人全国町並み保存連盟・一般財団法人 民間都市開発推進機構から、国の施策や支援、町並みをめぐる国の施策等の最近の動向、まちづくりファンドの仕組みなどを学びました。
さらに、全国各地からの事例報告が行われました。事例報告で興味深いのは、時間軸・保存対象が幅広く、様々な事例を知ることができる点です。例えば、町並み保存に取り組み始めて40年以上の歴史がある地域もあれば、保存活動がはじまったばかりの地域もあります。また、保存対象も、城下町のような町並みから、棚田のような自然景観まで多種多様です。
その後、全国を7ブロックに分けたブロック別会議の九州では、町並み保存団体が集まり、それぞれの地域での課題やそれに対する提案など、活発に情報交換が行われました。特に竹富島からは、「海岸沿いの土地を競売で入手した業者から、リゾートホテル開発が、町民は海岸の素晴らしい景観を壊すので反対しているにもかかわらず進められている」との報告を受け、九州ブロックの皆さんの総意として、本大会で開発反対の決議を行うことになりました。
2日目の午前中は、善光寺を中心に東西にわかれるリノベーションエリアと、宿坊が連なる通りを案内人と共に巡り、午後は「善光寺門前の場合-ここ10年の動き・まちとひとと文化と-」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。
善光寺周辺は、八女福島のように伝統的建造物群保存地区には選定されていない分、空き町家等のリノベーションの自由度が高いように見受けられました。実際、景観計画等による高さ・色彩の規制がある程度だそうです。しかし、各自が善光寺を大切に思い、門前町であることを意識して景観に配慮したリノベーションをすすめた結果、歴史と新しさが穏やかに同居した町並みとなっていました。
このゆるやかさは、建築物のようなハード面だけでなく、町並み保存にかかわる人的ネットワークにおいても同じことがいえました。
最終日は、各分科会からの報告です。印象的だったのは、歴史的建造物への「新しい」保存ということで「災害」が取り上げられていたことでした。昨今の自然災害の多さを考えると、災害からの守りも課題となってくるのかもしれません。